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(2)問題点の内容
人材確保の問題は、地域社会の観光産業への理解と密接に関連している。観光が沖縄経済の基幹産業のひとつであると位置づけられ、行政的にも積極的にそれを推進しているにもかかわらず、実際の社会では、生活と観光が自分のものとして理解されていない面もある。確かに観光がもたらす地域波及効果は間接的なものが多く、経済的効果にしても経済外効果にしても、生活の中で直接意識される部分は多くない。むしろ目に見える効果にマイナスのものがあるため、観光やリゾートのイメージが悪くなっている場合もある。ホテル業は華やかさがある反面、24時間体制の不規則な労働や地道なホスピタリテイー技術の習得が、職業としてのイメージギャップを助長させている点も指摘できる。
経済原理からいえば、希少性の高いものは価格が高くなるはずであるが、沖縄の場合、人手不足といいながら賃金が低いこともある。この点については各種の分析も行われているようであるが、フリーターいわゆる定職を持たない人が豊富に存在するため、正規社員でなく非常勤として、繁忙期には一時的に人材確保ができることが原因のひとつではないかといわれている。
企業における人材育成ノウハウは、系列ホテルではマニュアル化されたものがあり、それに地域性を加味してオリジナルなものをつくっているところが多い。中小ホテルでは、体系的なマニュアルを使って社員教育を実施しているところは少なく、経営者や管理職者の個人的ノウハウを用いるのが一般的である。個人的な技術や能力には優れたものがあり、客観的に高い評価を受けているホテルもあるが、日常業務に追われてなかなか体系立てることができないのが現状のようである。
スタッフの育成はどのホテルでも重要視している課題のひとつである。沖縄県産業振興公社では、数年前から管理職養成のための研修・派遣制度を実施しており効果をあげている。しかしこの制度は基金運用の利息によってまかなわれているために、産業振興基金の運用益が低金利時代を背景として、年々減少しているために、業界のニーズに充分応えられる水準でなくなってきている。

 

2. 地元雇用の現状と人材育成の必要性

(1)地域経済効果の認識
沖縄県では、農業主体の経済構造から戦後の占領時代を通して軍関連の収入が大きな割合を占める構造へ変化し、今また急激な観光化によって、サービス産業を中心とする構造となっている。こうした中で、観光事業がもたらす地域経済効果を疑問視する傾向もある。主な議論は本土系資本の導入により開発が行われた場合、その利益は本土系企業にのみ帰着するというものである。
地域経済効果の概念は立教大学の小谷教授が指摘するように、雇用効果、所得効果、産業連関効果、租税効果、産業施設整備効果、環境整備効果の6つに集約され、それぞれが地域経済の中に取り込まれることにより乗数効果を発揮する。沖縄国際大学の野崎助教授は、沖縄県におけるマクロ経済分析を通して、観光収入、政府最終消費支出、公的投資、基地収入に対する乗数効果を検証しているが、この中で観光収入が最も高い値(2.37)を示すとしている。財団法人日本交通公社が行った観光消費額の産業連関効果の測定では、総消費額2,024億円(1988年)に対して、所得効果1,523億円、原材料波及効果1,904億円、雇用効果34,011人という結果を出している。
沖縄の産業構造が脆弱なために、観光による投資効果並びに消費効果を充分地域で

 

 

 

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